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Toţi copiii Domnului すべて神の子

モルドバ・ルーマニア映画 (2012)

1991年にモルドバ共和国が独立国家として認められてから最初にアカデミー外国語映画賞に出品した映画。残念ながら落選したが、2010年当時のモルドバの状況を反映した作品となっている。背景にあるのは、貧困に起因する売春、児童ポルノ、臓器売買などだが、この映画でその一端を垣間見せるのは売春だけで、児童に係わるものは言葉で簡単に示唆されるだけに留めている。そして、この映画の主人公である10歳のパヴァラッシュを演じるエメルジアン・カーザック(Emergian Cazac)は類い稀なくらい可愛らしく、映画が深刻で凄惨なものになるのを防いでいる。逆に、その「ファミリー性」が、外国語映画賞を落選に導いたのかもしれない。それにしても独立から20年が経過し、一見きれいに見える首都キシナウで、このような闇がうごめいているかと思うと恐ろしい。映画の最後には、インターポールの「国際犯罪組織による人の密売は何十億ドルに達し、現代の奴隷を生み出している」という警告文、ユニセフの「セックスや労働の対象として密売される女性や子供は毎年70万人から400万人の間で変化している」という警告文を表示している。監督のこの映画に対する矜持だろう。標題は、「神によって創られた子」なのに、悲惨な目に遭う社会の不条理を示唆したものとなっている。なお、イタリア人のポン引き(マフィアではない)が悪の権化のように描かれているが、イタリアには可哀そうな気もする。

カナダ人のピーターと結婚し、カナダで幸せに暮らしていたモルドバ生まれの妻アリーナは、10歳の愛児が車に轢かれて死亡してから元気がない。二度と子供のできない体のため、寂しさを紛らそうと 生まれ故郷のモルドバを夫婦で訪れる。そして、公園に座っていると、愛くるしい男の子が、「この人、見たことありません? ママなんです」と言って写真を見せる。最初は、あまり関心のなかったアリーナだが、話しているうちに少しずつ好感を抱くようになり、夫が車で迎えに来た時、送ってあげようと声をかける。行き先は孤児院だった。夫妻は、翌日も、翌々日も孤児院を訪れ、男の子パヴァラッシュに会う。この頃には、是非とも養子にしたいと考えるようになっていた。一方、パヴァラッシュの母イリーナは、1人息子を3年半も祖父に預けたままにしていたが、実は、その間、ミラノで売春婦として強制的に働かされていた。しかし、あることを契機に、飛行機代〔当時は不明だが、現在の最安値で片道16000円くらい(フライト時間2時間の割に安い)〕をこっそり貯め、イタリアからモルドバに帰ってくる。首都キシナウで旧友のタチアナと会ったイリーナは、パヴァラッシュを6万ユーロ〔当時の約660万円〕で養子に出し、半分を逃げてきたイタリア人のポン引きブルーノに渡して自由にしてもらい、残りの半分は投資して10万ユーロになったら息子を引き取るという計画を打ち明ける。タチアナは、変だと思ったが、計画を信じ、2人で祖父の家までパヴァラッシュを引き取りに行く。ところが、行った先で聞かされたのは、祖父はとうの昔に亡くなり、パヴァラッシュはキシナウの孤児院に入れたという話。2人はキシナウに戻るが、待っていたのは、ミラノからイリーナを追って来たブルーノ。彼は、イリーナの提案を聞き、3万ではなく5万寄こせ、しかも3日以内に渡さなければ、子供は闇市場で売り飛ばす(臓器売買)と脅す。そうした事情を知らないカナダ人の夫妻は、孤児院にかけあってパヴァラッシュを養子にする交渉を始めるが、当のパヴァラッシュは母が大好きなので拒む。ブルーノはイリーナに命じてパヴァラッシュを孤児院から連れ出し、ホテルに閉じ込める。パヴァラッシュは、自分が養子にされると漏れ聞き、ホテルから逃げ出す。そして、消えたパヴァラッシュを追って、ブルーノ、イリーナ、カナダ人夫妻、夫妻から相談を受けたインターポールの4者が錯綜する。最後は、ブルーノによってイリーナが射殺され、そのブルーノもインターポールにより射殺される。パヴァラシュは孤児院で親友だったジーコと共にカナダ人夫妻の養子となる。そして、映画の最後に、イリーナの隠していた秘密が明らかにされる。

エメルジアン・カーザックは、とにかく愛らしい。息子を亡くしたカナダ人が一目で気に入り、養子にしようと真剣に思う。それほど可愛い。しかし、名前以外、何も情報はない。国籍すら分からない。ルーマニアとの共同制作なので、ルーマニア人なのかもしれない。因みに、この映画での意外な配役は、カナダ人のピーターを演じるマイケル・アイアンサイド(カナダ生まれ)。これまでの役柄とは全く違っているので戸惑うほどだが、さすがに巧く演じている。悪役ブルーノを演じるパオロ・セガンティはイタリアの俳優、インターポールのマークを演じるヴァス・ブラックウッドはイギリスの俳優。それ以外の女性(イリーナ、アリーナ、タチアナ)は、この映画だけの出演なので、モルドバ人なのかもしれない。


あらすじ

映画の冒頭、オープニング・クレジットが流れる間、1人の若い女性が電話をかけているシーンが続く。女性は、電話口にフェーギャを呼んで欲しいと頼む。相手が出ると、「イリーナよ。明日、そっちに行くわ」と告げる。「何? どういうことだ? こっちへ来る?」。「あした、そっちへ行くって言ったでしょ。パヴァラッシュに伝えてね?」。「よく分からんな。家に来るんか?」。「仕事は辞めたの」。「だけど、来るのは大変じゃないか?」。「フェーギャ、何が言いたいの? ちゃんと伝えてよ。そっちは変わりない?」。「ああ。何で訊くんだ?」。「もう切るわね。それじゃ」。何とも、ちぐはぐな会話だ。女性の名はイリーナ。電話をかけながら薬を飲んでいるが、鼻から血がポタポタ落ちている。最初に観た時は気にも留めなかったが、これは重要な伏線になっている。フェーギャは、トランスニストリア〔モルドバの中にある「沿ドニエストル共和国」と呼ばれる半独立国家の中にある町〕に住んでいるイリーナの親戚の男性だ。パヴァラッシュはイリーナの10歳になる1人息子。イリーナは3年半前にイタリアに出稼ぎに行き、その間、パヴァラッシュをフェーギャに預けておいた。そのイリーナがイタリアから戻ってきて、モルドバの首都キシナウのホテルから電話をかけている。電話を終え、イリーナが何事か考え込んでいる。そして、「1日目」と表示される〔「6日目」まである〕。場面は急に変わり、小さな吊橋の上から子供たちが川に飛び込み、赤い服を着た、もっと小さな子がそれを見ている。パヴァラッシュだ。全員いなくなると、パヴァラッシュはポケットから写真を取り出し、やってきた女性に、「この人、見たことありません? ママなんです」と言い、見せる(1枚目の写真)。女性は知らないと答え、頭を撫でて去っていく。公園に行ったパヴァラッシュは、ベンチに1人で座っている黒髪の女性の横に腰かけ、同じ質問をする。知らないと言われると、「僕、どこにいるか知らないの」と付け加える(2枚目の写真)。「きれいな女(ひと)ね。いなくなったの?」。「うん」。「どうして見失ったの?」。「ママ、突然どこかに行っちゃった」。「気の毒にね。何て名なの?」。「パヴェル・プイオ。でも、パヴァラッシュでいいよ。まだ子供だから」(3枚目の写真)。「いつになったら、ちゃんと呼べるの?」。「14歳だよ。ジーコがそう言ってた」。「ジーコって誰?」。「孤児院で一番の親友」。「孤児院にいるの?」。「うん」。「私はアリーナって名だけど、14歳まではアリヌータだったわ」。アリーナは、パヴァラッシュと話しているのがだんだん楽しくなってくる。「あなたくらいの年の息子がいたの。ミヘイタって名よ」。そこにカナダ人の夫が車でやってくる。「アリーナ。もう行く時間だぞ」(青字は英語)〔夫は英語しか話せない。モルドバで使われているルーマニア語は、聞けば分かる程度。モルドバ出身のアリーナと結婚し、カナダで暮らしている〕
  
  
  

その頃、イリーナは、キシナウ市内に住んでいる昔からの友人タチアナの家を訪れる。「なぜ電話くれなかったの? 空港まで迎えに行ったのに」。3年半ぶりの再会に2人は大喜び(1枚目の写真)。一方、アリーナは、「孤児院まで乗っていかない?」とパヴァラッシュに訊く。「この車、乗っていいの?」。車は、トヨタのピックアップトラック「ハイラックス」の最新型。夫は、助手席に乗ったパヴァラッシュに、「私はカナダ人。カナダから来たんだ」と話しかける。「車が好きなんだな?」。「はい」。「私もだ」。音楽をかけ、2人で仲良く手拍子。パヴァラッシュは、後ろを向いて、「乗せてもらえて、サイコーだね」と満面の笑顔。アリーナ:「それはどうも」。「ジーコがここにいたら、喜んだと思うよ」(2枚目の写真)。「ジーコって?」。「僕のベスト・フレンド」。「ここだよ」。「ああ」。車は孤児院に近づく。車から降りたパヴァラッシュは、アリーナに、「どうもありがとう」とお礼を言う。「いつか、ジーコにも乗ってもらいましょうね」。「僕は?」。「もちろん一緒よ」(3枚目の写真)。「じゃあ、また会えるんだね? ここまで来てくれるの?」。「訪問者は許されるの?」。「もちろん。いつ来てもいいよ」。パヴァラッシュは、可愛いし、とても人懐っこい。夫婦はパヴァラッシュのことが気に入る。
  
  
  

そのパヴァラッシュ、実は無断外出だった。見つからないよう走って裏口に向かうが、それを用務員の女性に見つかってしまう(1枚目の写真)。「こら、悪たれ、止まりなさい!」。パヴァラッシュは、無視してドアから入ると、ドアの前に机を置く〔ドアは外開き〕。用務員の女性は、ドアを開けて入ったところで、机にぶつかって転倒。パヴァラッシュは教室まで駆けて行く。女性が起き上がった時には、パヴァラッシュはいなくて、代わりに、同じような赤い服を着たジーコが別の部屋から廊下に出てくる。女性は、ジーコが「悪たれ」だと勘違いして怒鳴ったので、ジーコは教室に逃げ込む。そこに院長が通りかかって、「何事?」と尋ねる。「無断外出です」。「誰なの?」。「今、捕まえます」。教室では、パヴァラッシュは机に悠然と座り、ジーコがその前に立っていた。当然、疑いはジーコにかかる。用務員は、「ジーコ、よくもやったわね」と言うと、ジーコの耳をつかむ。今度は、院長が、「君なのね。覚悟なさい」と手をひっぱる。「叩かないで!」。「手を出しなさい!」。院長は細い棒でジーコの手の平を叩く。パヴァラッシュは「やめて!」と止める。「何のつもり?」。パヴァラッシュ:「無断外出したのは僕だよ。机を置いたのも僕」。用務員は、「お前だったか!」と突進し、パヴァラッシュは逃げる。院長に捕まりそうになると手を噛んで逃げる。しかし、用務員にがっちり捕らえられ、院長には「この悪魔、覚悟なさい!」と、腕をつかまれる(2枚目の写真)。その後は、棒による手の平叩き。何度も叩かれたに違いないが、映像はアリーナと夫のピーターに切り替わる。アリーナは、パヴァラッシュの母の写真を見ながら、「私たちのミヘイタは、あの子と同じくらいの年だった」と悲しむ。一方、イリーナとタチアナは簡単な食事をしながら話し合っている。「最後にあの子に会ったのはいつ?」。「3年半前。この1年は、お祖父ちゃんもいなくなって、フェーギャの家にいるの。明日、会いに行くのが待ち遠しいわ」。そして、再び教室。パヴァラッシュの左の手の平には真っ赤な痕が付いている。英語の授業が始まっているが、パヴァラッシュは如何にも痛そうだ(3枚目の写真)〔10歳のクラスで、結構進んだ英語の授業が行われている。パヴァラッシュ、そして、後から分かるが、ジーコもピーターと英語で通じるのは、授業の賜物〕
  
  
  

その夜、イリーナとタチアナはベッドの上で酒盛りを始める(1枚目の写真)。そこで、イリーナは信じ難いような計画を話し始める。要点をまとめると、①イリーナはイタリアのポン引きブルーノから逃げてきた。②ブルーノには3万ユーロ〔当時の約330万円〕渡して自由にしてもらう。③そのため、パヴァラッシュを誰かに6万ユーロで養子に出す。④残った3万ユーロを投資する(ユーロ圏のルーマニアで売春宿を立ち上げる)。⑤数年して3万が10万に増えたら、パヴァラッシュを引き取る、となる。タチアナは、(a)自分の子供を養子に出すなんて信じられない。(b)一旦養子に出したら、二度と戻らない。(c)ルーマニアでは売春は違法、などと反論するが、イリーナは聞く耳を持たない。会話が済んだ後、イリーナが一人で洗面の鏡を見つめながら溜息をつき、薬を飲む〔映画の冒頭に次いで2回目〕。そして、バスタブの横にしゃがみ込み、顔を覆って悩む。そして、「2日目」。イリーナはタチアナの車で南に向かう。途中から未舗装の田舎道になり、両側が池になった中央を進む。行く手には国境の遮断機がえる(2枚目の写真)。ここは、モルドバと 沿ドニエストル共和国との国境。係官の腕には沿ドニエストル共和国の国章が付いている〔モルドバ共和国は独立を認めていないので、警備に立っているのは、一方的に独立を宣言した側だ〕。国境を通過し、しばらく走っていると、警察が検問をしている。離反した軍人が上官を射殺したので、車のトランクに隠れていないかを調べていた〔伏線〕。イリーナは、ようやくフェーギャの家に着く。辺りには何もない農家だ。現れたフェーギャに、イリーナは、「パヴァラッシュは、どこ?」と訊く(3枚目の写真)。「彼なら元気だ。キシナウにいる」。「ここじゃないの?」。次の場面は、村の飲み屋。フェーギャが、酒を飲みながら、「頼む。許してくれ」とイリーナに謝る。「だが、ここいない方がいいんだ。あそこなら、学校に行けるからな」と弁解する。「それなら、なぜ、昨日 そう言わなかったの?」。怒ったイリーナは出て行き、フェーギャが後を追う。1人になったタチアナは、隣のテーブルで酒を飲んでいる1人の男に惹かれる〔実は、警察が捜していた軍人〕
  
  
  

映画では、少し前後するが、孤児院の前の草むらにパヴァラッシュとジーコが寝そべっている。パヴァラッシュ:「どうして、建物の中にはアリがいないのかな?」。「いるの?」。「ここさ」(1枚目の写真)。そこに、車で乗りつけたのがピーターとアリーナ。パヴァラッシュは、ジーコに、「昨日、車に乗せてもらえたんだぞ」と教えて、車に走っていく(2枚目の写真)。パヴァラッシュはアリーナに、「こんなに早く? 何かあったの?」と尋ねる。アリーナは、「お母さんの写真を返しに来たの」、と写真を渡す。「ありがとう。これジーコだよ」。ジーコとアリーナは挨拶し、ピーターが、「私はピーター」と言うと、「僕はジーコ」とちゃんと英語で返事する。「ジーコ、会えて嬉しいよ」。夜、孤児院で。隣合ったベッドに寝ているパヴァラッシュが、「ジーコ」と声をかける。パヴァラッシュはジーコにひそひそ話をし、その後、2人は上を向いてニコニコする(3枚目の写真)。何を話したのかは分からないが、仲の良さはよく分かる。その後は、タチアナと男のシーン。男は人生に絶望していて、「俺は、絶対許してもらえない」と嘆く。タチアナは、そんな男を慰めようとベッド・インするが、男は拳銃で頭を撃って自殺。ここで、「3日目」に入る。早朝、軍の施設に監禁されたタチアナとイリーナを軍の中堅幹部が訪れ、「奴は何て言った? なぜ謀反した?」と尋問する。タチアナは、「彼は何も話しませんでした。彼が謀反人だとは知りませんでした」と正直に述べる。しかし、2人の監禁は解かれない。
  
  
  

ピーターとアリーナは、パヴァラッシュをレストランの個室に連れて行き、ランチを一緒に食べてる。パヴァラッシュは、シャレた格好の男性が皿を片付けるのを見て、「これってカナダ流?」とトンチンカンなことを訊く(1枚目の写真)。「いいや、ホテルとレストランだけだ」。マレーナ:「私たちが住んでる所の話、聞きたい?」。「うん、聞きたい」。「とっても広いのよ」。「どのくらい?」。「君の孤児院の半分の大きさかな」。「わお」。「湖もある」。「おじさんの?」。「そうじゃないが… 泳ぐの好きか?」。「うん」(2枚目の写真)。「いつでも好きな時に泳げるし、ボートでも遊べるぞ」。「すごい」。「おウチについて話しましょうね」。「お湯、いつでも出るの?」。「ええ、どうして?」。「孤児院じゃ、決まった時しか出ないから。ボク、お風呂でバチャバチャするの好きなんだ。何時間でもね。シャワーはダメ」。「ピーターと同じね」。「そうなの?」(3枚目の写真)。パヴァラッシュは、実に愛くるしい。ピーターとアリーナは、すっかりパヴァラッシュの虜になる。
  
  
  

話は 相前後するが、逃亡したイリーナを追って、ポン引きのブルーノがイタリアからキシナウ国際空港に到着する(1枚目の写真)。迎えに来たのは顔見知りの同業者のワル。2人の間で交わされるのはイタリア語。男は、プルーノをタチアナの自宅に連れていくが、タチアナもイリーナも沿ドニエストル共和国で捕まったままなので、家には誰もいない。あきらめてホテルに向かう。一方、丸1日監禁されていた2人のもとに、兵士が敷き布団を1つ抱えて入ってくる。これで夜になる前に解放される可能性はなくなった(2枚目の写真)。最後に孤児院。窓の外を見ていたジーコが、シーツなしで寝ているパヴァラッシュを見て(3枚目の写真)、丁寧にシーツをかけてやる。2人の友情がよく分かる。
  
  
  

4日目」。パヴァラッシュを気に入ったピーターとアリーナは、今日も、孤児院から連れ出す。ジーコも一緒だ。4人が向かった先は遊園地。パヴァラッシュとジーコは、ゴーカートで思う存分遊ぶ。ピーターは、息子を事故で亡くして以来 笑顔の消えてしまったアリーナが、パヴァラッシュを見て幸せそうに微笑んでいるのを見て、養子にしようと決心する。アリーナは、遊び終わった2人の記念写真を撮り(1枚目の写真)、ピーターはLサイズのポップコーン・カップを持ちながら、「君たち、もう1回乗りたいか?」と訊く(2枚目の写真)。2人は大喜びで2回目に挑戦する。それを見ているアリーナの顔も、最高に幸せそうだ。その頃、タチアナの家の前では、ワル2人が車に乗って帰りを待っている。運転席の男は、市内のバーのどこにも見当たらないのは異常だとブルーノに嘆く。そして、孤児院。ピーターは、院長室に入って行く。そして、ピーター・ジャクソンだと自己紹介〔ロード・オブ・ザ・リングシリーズの名監督と同じ名前!〕。「何かできることはありますか?」。「私たち夫婦は 養子をとろうと思っています」。「外国の方には、ほぼ不可能です。可能な場合でも、煩雑な書類手続きが必要です」。「妻は、この国で生まれました。証明する書類もあります。それに、養子にする子は、この施設にいます」。「誰ですか?」。「パヴェル・プイオです」。「残念ですが、彼の母親は遺棄宣言の申立てをしていません。他の子供では駄目ですか?」。「あの子には、父親がいません。母親は、何年も前に捨てて行きました」。「そうですが、いつでも引き取りに来られます」。「どうか助けて頂きたい。友達から聞いたのですが、お金を払えば、何とかなるとか…」。ここで、院長は怒って席を立つ。「お気に障ったらお詫びします。もし、お金の問題でしたら、糸目はつけません」。この言葉で、院長の表情が少し変化する。それを見たピーターは、「明日、もう一度参りますので、お考え頂ければ幸いです」と申し出る。院長は、「考えておきましょう〔I have to think about it〕」と思わせぶりな返事をする。なお、この映画に英語字幕は付いているが、英語での会話部分に字幕はない。
  
  
  

ピーターは院長室を出ると、1階に降りて行く。そこには、アリーナが心配そうに待っていた。ピーターはアリーナをしっかり抱きしめると、「何もかもうまくいった」と楽天的に報告する(1枚目の写真)。しかし、関門は別のところにあった。それは、パヴァラッシュ本人(2枚目の写真)。「ママは? いったいどうなるの?」。アリーナは、「1人で生きていけないわ。あなたには両親が必要よ。ここを出たら、あなたの好きな所に行きましょ。ヨーロッパでもカナダでも」と言うが、パヴァラッシュは、「ママなしで? そのこと分かってないんじゃない?」と反対する(3枚目の写真)。一方、タチアナもイリーナは、ようやく解放される。兵士は、自殺したブラットの親友だったので、こっそり「何が起きたか」を教える。それによると、職務中のブラットのテーブルの横で、麻薬でハイになった将校がロシアンルーレット〔回転式拳銃に1発だけ実弾を入れ、頭に向けて撃つ〕をやって死亡。恐慌をきたしたブラットは逃げ出し、軍は、彼が殺したと思って捜査していた、というもの。2人は、すぐにキシナウに帰る〔夜になっている〕。2人が元気付けに入ったバーでは、内通者がいて、その情報は直ちにブルーノに伝えられる。ブルーノはバーを訪れると、2人をタチアナの家に戻らせる。家に入った途端、ブルーノは本性を現して2人を殴る。イリーナは、国に帰ったのは、「あんたに3万ユーロあげるためよ。わが子を養子に出してね!」と打ち明ける(赤茶字はイタリア語)。ブルーノは、①これまで淑女として扱ってやった、②ジプシーに捕まった時は助けてやった、③ミラノでは希望通りダウンタウンに住まわせてやった、④いつも金をやって面倒をみてやった、と「恩」を並べ立て、3万では足りない、5万必要だと言い出す。そして、(a)明日、孤児院に行って子供を連れて来い、(b)買い手が見つかるまで俺が預かる、(c)5万寄こせば、残りはくれてやる、(d)猶予は3日、それまでに5万用意できなければ、子供は俺が売る、(e)子供を売るルートはある…養子じゃないが〔臓器売買〕、と告げる。ブルーノのような男は、まさに人間の屑だ。
  
  
  

5日目」。朝、ベッドに横になってパヴァラッシュが童話を読んでいると(1枚目の写真)、そこに、にこやかな顔をした女性教師が入ってくる。そして、ママが来ていると教える。「ママが来たの?」。パヴァラッシュは大喜び(2枚目の写真)。その頃 院長室では、息子を引き取りに来たとイリーナが告げている。院長は、ピーターとの約束を念頭に、「私の同意がなければ、連れて行くことはできませんよ」と言い、「遺棄宣言にサインしたらどう? 養子の家族を見つけてあげる。この孤児院の子供を欲しがってる外国人は多いのよ」と持ちかける。その話に興味を持ったイリーナは、「幾ら払ってくれるの?」と訊く。「幾ら欲しいの?」。「最低でも5万、しかも、即刻」。話がまとまる前に、ドアが開き、「ママ!」とパヴァラッシュが飛び込んで来て母に抱き付く(3枚目の写真)。「坊や、大きくなって!」。その後、イリーナは、先程の院長との会話を無視するような態度に出る。パヴァラッシュに、「行きましょ」と言って、一緒に部屋を出ようとしたのだ。「連れて行かせませんよ」。「さっきの話、警察にしてもいいのよ」。院長は、黙って行かせるしかない〔結局、院長の仲介でピーターに売ることになるので、この時は、ブルーノに言われた通りに連れ出しただけ〕
  
  
  

パヴァラッシュはジーコに別れを告げる。すると、イリーナが車から出てきて、「行くわよ!」と催促する(1枚目の写真)。2人は、ハイタッチ。パヴァラッシュは後部座席に乗る。イリーナの車が出るのと入れ替わりにピーターの車が入ってくる。ピーターは、1人残っているジーコに寄って行くと、「パヴァラッシュはどこ?」と訊く。「あの車の中」。車は、もう姿を消してしたが、さっき行き違いになったことは覚えていたので、ピーターはすぐに車に戻って後を追う。一方、イリーナの車の中では、運転しているブルーノが、「俺を紹介しないのか?」とイリーナに要求する。イリーナは、後ろを向くと、「パヴァラッシュ、運転してる男を見て。ブルーノって名なの」。ブルーノは、手を差し出し、「よろしくな、パヴァ、ハイタッチだ」と言うが、パヴァラッシュは何もしない。イリーナは、「彼は、とってもヤな男なの。信じちゃダメよ」と付け加える(2枚目の写真)。それを聞いたブルーノは、「イリーナ、俺がお前の国のアホ言葉は話せんが、意味は分かる。言葉に気をつけるんだな」と警告する。パヴァラッシュは、「彼、何語 話してるの、ママ?」と尋ねる(3枚目の写真)。「イタリア語よ。カエル入りのマカロニを食べる連中だけが話す言葉」と、蔑むように答える。「お前、頭が変なのか? お前の話してるコトは分かるって言ったじゃないか」。「息子と話してるだけじゃないの。クソ金が手に入るまで、運転に専念してなさいよ!」。腹を立てたブルーノは、車を道路脇に停めるとイリーナの顔を殴る。怒ったパヴァラッシュは、「よくもママを殴ったな」と、ブルーノの首をつかみかかり、手をほどかれると、後部座席のドアを開けて逃げ出す。
  
  
  

パヴァラッシュが逃げ出したのは、後を追って来たピーターも見ていた。ピーターは、車を停めるとパヴァラッシュを追いかけ始めるが、距離が離れている上に、肥満体+高齢なのでスピードが遅い。一方、ブルーノは、追いかける前に、イリーナに向かって、「お前もガキも殺されたいのか?! 最後の警告だ! 逃げるなよ!」と警告し、車から出て行く。パヴァラッシュは地下街に逃げ込むが、運悪く、ブルーノに先に見つかってしまう。ブルーノは、「よくきけ、このクソガキ、お前が変なマネしない限り、傷つけたりはせん。だが、今度逃げたら、ママもお前も一巻の終わりだ。分かったな?!」と脅す。パヴァラッシュには一言も分からなかったが、その恐ろしさは100%理解できた(1枚目の写真)。ピーターが地上に戻った時には、ブルーノの車はどこにもなかった。そこで、ピーターとアリーナは地元の警察に行って、子供が連れ去られた状況を説明する〔話すのは、もっぱらアリーナ〕。ところが、1991年までソ連邦に属していたため警官の態度は共産主義国家にありがちな教条主義そのもの。アリーナの話など無視し、「モルドバ共和国訪問の目的と期間は?」と訊く。「何言ってらっしゃるの? あなた税関の人か何かなの?」。「イスラエルに行ってますな?」。ピーター:「はい」。アリーナ:「『はい』と言ってます」。「英語くらい分かりますよ、奥さん」。「メキシコにも?」。ピーターは「行ってますよ」と答えると、アリーナに、「子供が誘拐された可能性が高いと言ってるのに、彼 分かってるのか?」と話す。それを横を通った黒人が耳にはさむ。「我々の時間は貴重なんですぞ。それを、あんた達は妨害してる。この間にも、一杯事件が起きている」。「それこそ、私たちが言ってることじゃないの! 子供が誘拐されたのよ! 何か、できることくらいあるでしょ。孤児院に母親の住所を問い合わせるとか」(2枚目の写真)。「モルドバの警察は、なすべきことは十分わきまえている」。ピーターは、ドイツのナンバープレートを付けた黒のフォルクスワーゲン・トゥアレグを調べたら、とアリーナに言わせる〔『英語くらい分かる』と言った割に、彼が分かったのは『Yes』だけ〕。「そんな情報は何の役にも立たん。こんなことはキシナウじゃ日常茶飯事だ。世界中の大都市じゃどこも同じだろう」。憮然としたピーターは、「あんたは国の恥だ。人々を守るのが警察だろうが」と言い捨てて、その場を去る〔英語なので、何を言われたのかは分からない〕。警察署を出てきた2人を待っていたのは、さっきの黒人。それは、インターポール〔国際刑事警察機構〕の職員マークだった。マークがモルドバに来たのは、ここが臓器売買の起点地だから。よって、廊下で耳にはさんだ「子供が誘拐」という言葉に敏感に反応したのだった。マークは、違法取引の中核を担っているバーを教え(3枚目の写真)、今度とも連絡を取り合おうといって別れる〔マークは英語がメイン〕
  
  
  

イリーナと一緒にホテルに連れて行かれたパヴァラッシュは、ベッドの中で、「イタリアには飛行機で行くの?」と質問する。「そうよ」。「うんと高く飛んでくの?」。「おウチは小さくなるし、人間なんてもっと小さくなるわ」。「アリくらい?」。「こんなくらいよ」(1枚目の写真)。「僕たち、もう二度と別れないよね?」(2枚目の写真)。「ええ」。「この前も、僕を捨てたんじゃないって知ってた。先生が、説明してくれたから。大人になると、仕事とかお金でトラブルことがあるんだって」。「そうなのよ。お金が問題なの」。「お金なんかない方がいいのに」。「そうね」。「二度と、僕を一人にしないでね」。この言葉は、イリーナの心にぐさりと刺さった。パヴァラッシュを5万ユーロ以上で養子に売るしか生きる道はなかったので、返答に困ってしまったのだ。そこで、「ジュースを飲みましょう」と言うと、ベッドサイドに置いてあるオレンジジュースを涙を拭いてからコップに注ぐ。悲しいシーンだ。一方、ピーターは、マークから聞いたバーに行き、タチアナの家を教えてもらう〔店自体は怪しい雰囲気に包まれているが、バーテンはまともで親切な男〕。ピーターはタチアナと会うと、「金を払えば子供が手に入ると言われたが、奴らは金だけ取って、パヴァラッシュは売り飛ばされる。5万払っても何の意味もない。一緒にインターポールに行こう」と持ちかける。しかし、前にイリーナから「計画」を聞かされていたタチアナは、「5万じゃなく7万よ。5万じゃイリーナには何も残らない」と、金額に執着する(3枚目の写真)〔5万→7万にしたのは、イリーナが3万と言っていたから〕。それに対し、ピーターが批判すると、「あんたは何も分かっちゃいない」と逆に非難を浴びせる。
  
  
  

ベッドでパヴァラッシュが1人で寝ていると、室外の電話のベル音で目が覚める。パヴァラッシュはそっとドアに近づくと、隙間から顔を出して耳を澄ます(1枚目の写真)。聞こえてきたのは、電話の会話ではなく、ブルーノとイリーナの話し声。「院長に電話しろ」。「もう、夜 遅いわ」。「パヴァラッシュの金が欲しいんじゃなかったのか? さあ、電話するんだ」。そして、電話が通じる。ここから先は、母が院長を相手に話す。「今晩は。こんな時間にごめんなさい。返事はイエスよ。パヴァラッシュをカナダ人の養子にするのに同意するわ」。パヴァラッシュは、ここにいれば養子にさせられると思い、ズボンをはき(2枚目の写真)、シャツをはおると、こっそり階段を降りる(3枚目の写真)。フロントの女性に気付かれるが、パヴァラッシュはそのままホテルから走り出て夜の闇にまぎれる。
  
  
  

6日目」。ピーターとアリーナが孤児院を訪れる。院長室にはイリーナが待っていて、院長が「このレディがパヴァラッシュのお母さんです」と夫妻に紹介し、「この方たちがパヴァラッシュを養子にと希望されてるの」とイリーナに話す。そして、部屋から出て行く。ピーターはイリーナの前に立って、「パヴァラッシュの具合は?」と尋ねる。「今ですか?」。パヴァラッシュは逃げてもういないので、一瞬、間がある。「元気です」。「彼には話した?」。「まだです」。ピーターはがっかりした顔になる。アリーナは、「あの子、あなたが大好きなのね」と優しく話しかける。イリーナ:「お子さんはいないのですか?」。「1人いたわ…」。アリーナには、それ以上話せない。ピーターが代わりに、「学校に迎えに行った時 事故に遭った。私の責任だ」と口を挟む。父を見て道路に飛び出し、車に轢かれたのだ。「でも、まだ若いでしょ」。「もう、子供はできないの。いっぱい医者に診てもらったけど」。そして、「あなたは幸運なお母さんね。あんなに素敵な息子さんがいて」。この言葉で、イリーナはもう嘘がつけなくなる。「彼、昨夜、逃げ出したの」(1枚目の写真)。次のシーン、ピーターはマークに相談する。マークは、知っておいた方がいいとした上で、パヴァラッシュがブラックマーケットで臓器売買の対象にされる可能性を指摘する(2枚目の写真)。車に戻ったマークが、運転席の部下にパヴァラッシュの写真を見せ、「この子に何か起きたに違いない」と告げる〔インターポールの職員は、事件に直接携わることはないと書いてあった…〕。パヴァラッシュはどこに行ったのか? ピーターは、ジーコに会いに行ったに違いないと踏み、再び孤児院に向かう。しかし、そこには戻っていなかった。アリーナは、最初に出会った公園じゃないかと提起する〔もう夕方で、薄暗くなっている〕。次のシーンでは真っ暗な中を走ってきたマークの車に、誰かが近づいて何かを話している。満足げな顔をしたマークを乗せ、車が走り去ると、その「誰か」がタチアナだと分かる。タチアナは、ピーターには反論したが、結局、インターポールに情報を流したのだ〔後で、その情報を元に、インターポールが売春宿を摘発する〕。そして、次のシーン、イリーナがバーテンに封筒を渡し、「持ってて。あたしに何かあったら開けて」と頼む(3枚目の写真、矢印)。バーテンは、「どうかしたのか? パヴァラッシュのことか?」と尋ねる。「奴ら、あの子を誘拐し、あの子は逃げ出した。それからどうなったか分からないの」。バーテンは、孤児院じゃないかと示唆する。
  
  
  

真っ暗な公園では、パヴァラッシュがジーコがブッシュの中に隠れている。ジーコ:「麻薬、飲まされたのかな?」。「そうさ、絶対さ。ママなら、あんなことしない」。「どんな?」。「僕のこと愛してると言ったのに、あのカナダ人の養子にしちゃうなんて。カエル食いに麻薬を飲まされたんだ」。そこに、ピーターの車が到着、ヘッドライトで2人の姿も一瞬、明るく照らし出される(1枚目の写真)。ピーターとアリーナは車から降りるが、真っ暗なので捜しようがない。そこに、イリーナがタチアナの車で乗り付ける〔タチアナは乗っていない/孤児院経由で来たのか?〕。イリーナ:「パヴァラッシュのこと、何か分かりました?」。アリーナ:「姿は見てないけど、ここにいるんじゃないかと思って」。その時、そこにブルーノが現れる〔イリーナの情報を逐一入手している?〕。「イリーナ、行くぞ」。「放っといて!」。仲間が、止めようとしたピーターを殴る。実に暴力的だ。パヴァラッシュとジーコは、イリーナを助けようと 茂みから飛び出して行く。そして、「殺してやる」とイリーナをつかんだブルーノに飛びかかる。混戦に終止符を打ったのはアリーナ。公園に落ちていた大きな石を両手でつかむと、ブルーノの後頭部を殴りつける(2枚目の写真、矢印は石)。気絶こそしなかったが、イリーナと子供たちは逃げることができた。そこに、事前に連絡を受けていたマークが、サイレンを鳴らして到着。次のシーンは、再びバーのバーテン。タチアナが、「イリーナはどこ?」と訊きにくる。バーテンはこっそり何事かを囁きかけ、その後で、イリーナの残していった手紙を渡す(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

ブルーノは、マークが到着する寸前に車で逃げ出し、逃げたイリーナの車を追う〔パヴァラッシュも乗っている〕。「あのアマ、どこに行く気だ?」。殺気立った雰囲気だ。イリーナは、見知らぬ場所で車を停め、パヴァラッシュに、「ここで降りなさい」と命じる。「ママ、怖いよ」。「降りるの」。「イヤだ!」。「孤児院に行きなさい。あいつをやっつけたら、迎えに行くから」。「孤児院には戻りたくない。ママと一緒にいたいんだ」(1枚目の写真)。「一緒にいるわ、約束する」。イリーナは、パヴァラッシュを降ろすと、かなり離れた所で車を停め、追って来たブルーノと対峙する。ブルーノはイリーナを車から引っ張り出す。イリーナに「くそ野郎!」と罵倒され、顔を殴る。そして、「俺様が誰だか忘れたか?」と詰め寄り、「ガキはどこだ?」と訊く。イリーナは、「あんたや、あんたの汚い金なんかクソ食らえ! 教えるもんか!」と言って、顔にツバを吐きかける。一方、道路脇を走っていたパヴァラッシュは、後ろから来たピーターの車に乗せられる。さらに、その後をマークの車がついて行く。2台は、ブルーノとイリーナのいる場所に乗りつける。拳銃を構えて駆け寄るマークらを見て、ブルーノはイリーナの頭に拳銃を突きつける。イリーナは、とっさに、首を押さえている方の左手に噛みつき、ブルーノは思わず手を放す。イリーナは逃げ出し、その背中めがけてブルーノが撃つ(2枚目の写真)。ブルーノはマークらの銃弾を浴びて倒れる。パヴァラッシュは母を助けようと走り出し、途中でピーターに止められる〔ピーターは、直後にブルーノに脚を撃たれて倒れる→軽傷〕。その後、悪漢ブルーノは、もう一発撃たれてようやく死亡する。イリーナは、駆け寄ったパヴァラッシュに、「泣かないで、天使になるんだから」と言い、子供の頃、いつも聞かせていた歌を口ずさみながら死ぬ(3枚目の写真)。
  
  
  

1ヶ月後」。「エア・カナダ」のチケットホルダーを手にしたピーターが、タクシーに乗っている。隣には、パヴァラッシュとアリーナもいる。タクシーは空港に着き、3人が車から降りる。2台目のタクシーが、その後に続き、中からタチアナとジーコが降りて来る(1枚目の写真)。ジーコは見送りに来たのかと思ったが、タチアナは、「パスポートは中に入ってます」と言って、バッグを背負わせて前に押しやる。ピーターとアリーナは、パヴァラッシュとジーコの2人とも養子にしたのだ。ピーターは、「本当にありがとう」と言って、タチアナと握手する。アリーナは、タチアナを抱いて「元気でね」とお別れを言う。空港への階段を半分登ったところで、パヴァラッシュとジーコは顔を見合わせると、駆け下りて行ってタチアナに抱き付く(2枚目の写真、右に大きく見えるのはジーコの顔)〔タチアナが、ジーコも養子に取るよう、夫妻を説得したのであろう〕。階段を登りきった「一家」は、タチアナに最後の別れをする(3枚目の写真)。タチアナの右手には、ずっと何かが握られている〔財布のように見える。タチアナはかなりの大金をもらったのだろうか?〕。空港から戻るタクシーの中で、タチアナの独白が入る。「私、許してもらえた? 許してくれたわよね。今でも分からない。なぜ、あなた、私を信用しなかったの? なぜ、不治の病だと言ってくれなかたの? あなた、私に、ルーマニアでの投資と、子供を売りたがってるって話を信じさせようとした。そして、バカな私は、それを信じちゃった。許してね。あなたがこんなに早く死ぬなんて思わなかったの。許して」〔映画の冒頭でイリーナが鼻血を出し薬を飲むのは、この「不治の病」の伏線だった〕
  
  
  

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